電車はあと、10分で発車だった。




手のひら




「お〜〜いヒロ?」



隣のチャマがしきりに話しかけてくる。



「そんな別れるのがいやならさ・・・ほら別に・・」



「ううん。いいんだ」



俺はちょっと強がっていた。本当は寂しい。と別れるのは。






-------1時間前-------




俺はといつもの公園のブランコに乗っていた。





「俺・・・メジャーデビューするからさ、東京に・・住むんだ。だから・・ゴメン」




俺はその言葉を出る直前にならなきゃ、には言い出せなかった。





「いつかはさ・・来るかと思ってたけどさ・・いつ出発なの?」




はそう言うと、ゆっくりとブランコをこぎ始める。



「・・・・・今日」


は驚いてブランコをとめてた。この反応になることはわかっていた。


後々から言う方が切なく、悲しいコト。そんなのわかってたハズ。





「え・・・ヒロそんなこと一言も言わなかったじゃん?そりゃあ少しは分かってたよ。バンドが少しずつ有名になってきたコトは。けどさ・・・いきなりすぎるよ・・」








の目には大粒の涙。砂の上にポツポツと落ち、その部分だけが少し湿る。






「言うのが・・・・怖くてさ」




俺はなぜかの頭を撫でようとした。






「どっちの方がつらいのよ?なんもヒロ分かってない。もうバカ!東京にでもどこにでも行っちゃえ!」



は俺の手をはねのけて、公園を出て行った。





そして、俺たちは・・・・別れた。







-------現在-------



ちゃん・・・来なかったね」


チャマが期待はずれと肩を下ろす。



「俺が傷つけたから・・・さ・・・」




俺の目には自然と涙が溢れていた。止まらなかったんだ。









「ちょ・・ヒロあれ!ちゃんじゃねぇ?」



いきなり、前に座っている升が叫ぶ。



たしかに、駅のホームにはがいた。





もう発車1分をきった。



は俺らが座っているところの窓をトントンとたたく。



俺は窓をゆっくりと開けた。




「ヒロ・・・手・・出して」


俺は言われるがままに手を差し出す。はマジックペンを取り出し手のひらに何かを書く。





「発車します」



駅のホームで笛が鳴る。は、くるっと後ろを向いて、手を振りさえしなかった。



電車は俺たちの町を過ぎていく。





俺は手のひらにあるその文字を見た。




「離れていても一緒。大好きだよ」





その隣にはと名前が書いてあった。





俺はとたんに涙が溢れ出した。


俺は手を強く強く握り締めた。






06.2.19
ってか・・・電車の窓って開くの?(マテ