雨の日になると居るあの人。




雨の日じゃなきゃ会えない人。







雨の日にて







今日は午後から雨と、朝ニュースのおじさんが言ってた。



私はとたんに嬉しくなる。



だってあの人に会えるから。













あの人は雨の日になると、外にあらわれる。



雨の日以外にもいるかもしれないけど、私は見たことない。




そして、何故か彼は傘をさしてない。



毎回ずぶぬれで、じーっと空を見てる。



前話しかけようと思ったんだけれども、なんか私が話しかけるのも迷惑かなと思って話しかけられずに居た。




その日から二週間雨が降らなかったときは寂しくなっていた。



いつの間にかその彼に私は恋してた。




そして今日ようやく雨が降った。



私はいつもの時間に外に出る。相変わらず雨は降り続く。





いつもの場所に行くと誰かが居た。



あの人だと思うけど・・・




今日はコンタクト忘れてよく見えない。




あーバカだよ私。




とにかく話しかけてみようと思い私は話しかける。




「あのぉ・・・」




私は勇気を振り絞り話しかける。



「?」


彼はこっちを向き、きょとんとした顔でこっちを見ている。




よく見ると今日は傘をさしていた。




そして背中にはギターケース





「あっ・・・・すいません。人違いでしたぁー」



「ちょ・・・いつもここに居る人だろ?」



彼はにこっと笑っている。



「あ・・はい。傘をいつもさしてなかったので、大丈夫かな・・・って」




「今日はギター持ってるからさ。いつもはさしてないけど」




「何でですか??」













「雨が好きだから」









彼はそう言って空を見る。




私も雨は嫌いじゃない。どちらかといえば好きな方。



不便なところはあるけど、なんか幻想的で。



なんかつらいことを思い出したりしちゃうときもあるけど



それもまたいいとこと思ってる。






「私も好きだなぁ」



「珍しいなぁー雨好きって人」



「そう・・ですか?」




「うん。嫌いとかイヤとか多い。俺のハ゛ント゛はそんな感じ」




「へぇーハ゛ント゛」



いかにも音楽やってそうな感じだったからあまりびっくりしなかった。






「とゆうかお名前は?」




「俺は増川弘明」






どこかで聞いたこと・・・ある?ない?



うーむ。






「君は?」




「私はです」





ちゃんか。かわいい名前だね」




「そうですか?」





「おっと。そろそろ雨がやんできたし、あいつらに怒られるわ」





そういって眺めた空にはもう雨の雫があまり落ちて来なくなってきていた。






「じゃあ」





増川さんはそういうとその場を離れていってた。



少しずつ空も晴れ間を見せ、ゆっくり虹を作り上げていた。






最後まで、彼に気持ちを言うことはできなかった。




そして彼はその後その場に現れることはなかった。







梅雨の季節は終わりを告げ







私の恋も終わった。










そして、増川さんがあの有名なバンドのギターと知ったのは














またその少し後の話。











06.3.21
思いを伝えられたらよかったのに。また会える日まで