聞こえる・・君の声。
Good bye
「藤原くん・・・雨降ってきたね」
「あー」
「家に・・・帰らなきゃ・・・ねぇ?」
「あー」
「ゴメン・・・」
「なんであやまる?」
「あっ・・ごめん」
「ほら、また」
そういうとゴロゴロっと空が鳴る。
雨のバカヤロウ。
「でもさ・・・自転車」
「明日朝一で持ってくるからさ」
「あ、うんありがとう」
そういってが背中で笑ったような気がした。
「あ、藤原くんそこ右ね」
「あー」
俺はに言われるがままにハンドルを動かす。
空の調子は・・・さっきより悪くなっている。
雨が冷たい。
そして、着いた場所は大きなお城のような家の前。
「これ・・・家?」
「うん」
「でかいな」
「大きいけど、いいことなんて1個もないよ」
「そうな・・んだ」
「うん」
は悲しげに笑ってた。
家の大きさからして幸せそうに見えるけど
はなにか不満があるらしい。
「今度うちに遊びにおいでよ」
「マジ?」
「うん。藤原くんが大好きなプリン焼いてあげる」
「ありがとう」
「んじゃあバイバイ」
はそう言ってまた笑った。
無理してるように見えた。
大きな門の奥へと歩いていくの背中はなんだか悲しそうに見えた。
俺はの名前を呼ぶ。
「っ!!」
「ど・・・したの?」
雨の音にかき消されてうまく聞こえないの声を俺はどうにか聞き取る。
「バンドさー明日練習だから」
「うん。見学しに行くね」
「入るべ?」
「明日決めるよ」
は一生懸命声を出していた。
「じゃあね」とはまた歩き始めた。
そして俺はその自転車をまたこぎ始めた。
雨の音は大きくなる。
06.3.19
彼女はきっと泣いていた。