俺がその屋上で見たものは、好きな女が飛び降りる一歩前だった。







アンブレラ








仕事の合間、暇を見つければいつもこの屋上。

しかし今日はあいにく雨模様。

けど俺は傘持参で、傘を差し屋上にいる。


そしていつものように屋上から景色を眺める。


隣には珍しく人の姿。

そういやあいつだ。この前の飲み会にうちの課で唯一参加しなかったやつ。



そして・・・俺の片思い相手。




雨がかなり降っているのに彼女は何故か傘を差していなかった。




!!」



俺がその名前を呼んだとたんに彼女はフェンスから身を乗り出した。




「何やってるんだべ?」



俺は彼女の体をこっちに引き戻す。







「離してよ」






そう言った目はすごく冷たくて、赤く染まっていた。





「何がやりたいんだべ?」




「見ての通り。死にたいのよ」




彼女は死にたいと簡単に口にした。




「死んでどうするんだべ?」




「だって私愛されてないから」



「え?」




「この前の飲み会さー私行かなかったでしょ?あの時・・・の誕生日だったんだ」





ってのは聞いたことある。


前から彼女が話す、彼女自慢の彼氏。





赤い目からはまた涙が一粒零れ落ちた。




の家にいったらね、他のね女がいてね・・・・いて・・ね」






「もう離さなくていいべ。苦しいんだろ?」





俺はそう言って彼女を傘の下に入れる。

彼女は俺のその言葉を無視してまたしゃべり始める。




「ドアがね開いてたからね、入っていったらね・・・ベッドでね・・・二人で」



「もういいべ!!」




俺は傘を落とし、彼女を抱きしめる。


冷たい雨が降り注いできた。




「私なんてね生きてる価値ないんだわ。愛されてないんだ。離して!!」




彼女は俺の腕の中で暴れだした。





「俺が・・・愛してるべ」



「嘘・・でしょ?また見せかけみたいな愛。もういらないんだってば!!」




「愛してるべ」





そう言って俺は彼女のおでこにキスをした。




「愛してないやつなんかのでこにキスするべ?」




「私なんか・・・何もいいことないし。生きてる意味ないって!!」





「俺が全部受け止めてやるべ」




「え・・・?」



の・・・の苦しみとか哀しみとか全部」



「本当に?」



「俺は嘘はつかねーべ」




「じゃあ・・・少しだけ胸借ります」



そう言って彼女は俺の胸に痛いほどしがみついた。


でもそれで彼女の気が済むなら俺の痛みなんかまだまだだから。





06.4.13
君にそっと降る雨避けてあげれる僕でいたいから